アラスカ・カナダの山旅・概要
2011年3月25日〜4月9日
中京山岳会は1969年にアラスカ・カナダ国境に聳えるフェアウエザー峰(Mt.Fairweather,4663m)登山(隊長・高坂晋、他4名)を実施した。1969年中京山岳会発行『青い氷河』を参照。40年ほど前のことである。その40周年記念としてアラスカ・カナダの山旅を今回、会の行事として計画された。参加予定であった高坂は仕事の都合が付かず、隊員からは深水修二だけが参加し、それに企画した沖允人と妻の道子の3名になってしまった。
沖が3月25日に先発し、31日にシアトルで深水と合流する。シアトルからアンカレッジに飛び、タルキートナへ約4時間かけて陸路を移動する。
4月1日、約1時間30分のマッキンリー遊覧飛行を行う。気温はマイナス4度で冷える。事務所で簡単な搭乗手続きをする。氷河に降りると雪が深いというのでオーバーシューズなどを借用する。乗るのは4人乗りの小型機である。午前11時30分にスムーズにフライトする。滑るように滑走路を走り、マッキンリーに向かって高度を上げる。マッキンリー(Mt.MaKinley(Denali),6194m)・ハンター(Mt.Hunter,4442m)・フォーレイカー(Mt.Foraker, 5304m)の、マッキンリー3山を眺めながら北のペテルス氷河、北東の大きなムルドロウ氷河の上をあちこちと飛ぶ。岩壁が手に取るほどの近さまで接近してくれる。やがて車輪の下に小さいスキーを装着し、一般登山コースのある南側のカヒルートナ氷河の右手の高度約3600mの氷河上に着陸する。飛行機から降りると、意外に柔らかい雪で一面おおわれ、膝上までもぐる。オーバーシューズ着用は正解である。マッキンリーの頂上が目の前に見えている。無風快晴である。こんなことはこの時期では珍しいという。真っ青な空に聳えるマッキンリーの頂上をあおぎ、一面が銀世界の中でのひとときは、人生最高の贅沢な贈り物であった。
翌日は、雪が降って、あたりは一面薄っすらと新雪であったが、駅舎の他かに何も無いタルキートナ駅まで行き、午前12時にタルキートナ駅発のアラスカ鉄道でフェアバンクスへ向かう。午後8時30分頃フェアバンクスに到着。
翌4月3日は曇り、ときどき小雨であったが、午前3時30分に起床し、午前4時30分に空港へ行く。かなり冷える。フェアバンクス午前6時00分発のアラスカ航空でジュノーへ飛ぶ。
ジュノーでは、市の20kmほど先にあるメンデンホール氷河へ観光に行く。年々氷河は後退しているようだ。40年ほど前にここを訪れた深水は、氷河の後退を目の当たりにして感慨深げであった。
4月4日、ジュノーからアラスカ・マリン・ハイウエイのフェリーでヘインズへ向かう。途中、5-6匹のイルカが船と競争するように頭を出したり、クジラが尻尾を見せたり、両側の山々からの氷河も見られたり、飽きない航路であった。船内は暖房がきいているが、甲板に出ると風が強く、羽毛服を着なければならなかった。フェイバリット海峡を進み、雪山と森林で囲まれたリン海峡の中を進む。約5時間の航海でヘインズ港に午後4時に着く。
4月5日、ローガン峰(Mt.Logan,5959m)とフェアウェザー峰の遊覧飛行をするため、空港会社のあるヘインズ・ジャンクションまでヘインズから約250km北に行く。午前6時30分、薄暗い中をレンタカーで出発する。道路は幸い一部しか凍結していない。しかし、気温は零度に近いので、用心して走る。ヘインズ・ハイウエイに入り、約70km走るとアメリカ税関、次いでカナダの国境がある。カナダとの時差が1時間あり、道路の標識がmileからkmに変わる。しばらくでブリテイシュ・コロンビア州からユーコン準洲に入る。素晴らしい雪山が続く。このドライブで野生の山猫やムースも見ることができた。アラスカは野生の国だということを実感する。
午前11時にヘインズ・ジャンクションに到着する。空港の中にあるシフトン・エアの事務所に行く。他のアメリカ人2名と相乗りになる。天候が良ければローガン峰の南東約240kmにあるフェアウェザー峰方面までフライトするが、パイロットの判断になるという。6人乗りの小型機である。12時30分に出発し、カスカウルシュ氷河、南アルム氷河、ローウエル氷河、ピナクル・ピークを回る。ローガン峰が遠くに見える。天候はあまり良くなく、160kmほど離れているアラスカとカナダの国境上にあるフェアウェザー峰方面までフライトはできなかった。しかし、平地からでは見ることの出来ない迫力ある山姿が望められ、堪能する。
4月7日、ヘインズから「アラスカの翼」という会社名の9人乗りの小さいプロペラ機で空路ジュノーへ、そしてシアトルを経由して4月8日に日本へ向かい、4月9日に帰国した。ほぼ、予定通りの旅をしたが、残念だったのは、旅行中、毎晩、各人がそれぞれ夜中に何度も起きて空を眺めたが、オーロラを見ることはできなかった。やはりもう少し早い時期で2-3日待機する必要があるようだ。(文責・沖允人)